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クリスマスの約束

『クリスマスの約束』
 どうしてこんなに早く来てしまったのだろう?ユリは後悔した。何しろ寒い。いくら楽しみだからって、待ち合わせの30分前に来るのは無謀だった。そう思っている間にも体は冷えていく。いつの間にか粉雪が舞っていた。ユリは泣きたかった。冷えた空気が高揚した気分を冷まし、自分のことが馬鹿らしく思えてきたからだ。そして何より寂しかった。浮かれていたのはただ自分ひとりの気がした。
「私・・・バカだなぁ・・・」
今日はクリスマス。奇跡が起こってもいいはずなのに。現実が容赦なく彼女の体に吹き付ける。
 いくら待っても待ち合わせの10時にはならない。もう1時間は経った気がするのに、時計はまだ9時45分を指している。

クリスマスの約束

「私・・・バカだなぁ・・・」
 彼女はうつむいてもう一度つぶやいた。
 涙がこみ上げてくる。

 それを遮るように、奇跡が、起きた。

「え・・・・・・?」
 ユリは自分の目を疑った。手の中にはホットの缶コーヒー。そして大きく暖かい手がユリの手を包んでいた。そして、耳元に聞きなれた声のささやきが聞こえた。
「待たせてゴメン。寒かったろ?」
 彼女は驚いた。まだ待ち合わせの時間までには15分はある。それなのに彼は来た。うれしかった。浮かれていたのは私一人じゃない。ユウジの手が暖かい。そんな理論的思考ではない。ただ、つらく苦しいときに彼がそばにいてくれた。私を包んでくれた。そんな感覚が彼女の心を満たした。気持ちがあふれる。言葉にならない。
 そうだった。いつだって彼は私を包んでくれた。それは今も変わることはない。メリークリスマス。私だけのサンタクロース。
 ユリは心の中で、そうつぶやいた。

2005-12-24